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1.学校歯科医について

1.学校歯科医とは

皆さんは、学校での歯科健康診断の思い出が、きっとあると思います。大きなお口をあいて、CやCO、○、×、Gなど様々な記号の思い出もあると思います。学校歯科医について少しお話をすすめて行きたいと思います。

歯科医師は、歯学に基づいて傷病の予防、診断および治療、そして公衆衛生の普及を責務とする医療従事者です。日本において、その職務等に関しては、歯科医師法(明治39年5月2日、歯科医師の身分や業務を規定する旧歯科医師法が、公布されました。現行の歯科医師法は、歯科3法(歯科医師法、歯科衛生士法、歯科技工士法)の1つで、昭和23年7月30日に公布、同10月27日に施行されました)により規定されている業務独占資格および名称独占資格の医療資格です。

学校歯科医とは、学校保健安全法に定められている「大学以外の学校で、歯科健康診断や歯科保健指導、歯科保健教育などの職務を非常勤で行う歯科医師」のことです。

学校歯科医は、学校保健安全法に定められた、学校歯科医の職務の準則に従い歯科医師であるとともに教育者として学校のなかで活動を行います。

学校歯科医は、児童生徒の健康と安全を守るために、学校関係者・学校医・学校薬剤師・地域の方々と専門を超えた連携を取りながら活動をしています。さて、学校歯科医は、学校や地域の中でどのような活動をしているのでしょう。

2.学校歯科医の法的な立場

学校歯科医は歯科医師法による「歯科医師」としての身分と学校保健安全法第23条に定められた「学校歯科医」の身分を併せもっています。

1)職務

学校保健安全法第1条に「児童、生徒、学生及び幼児並びに職員の健康の保持増進を図り、もって学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資すること」とされています。その職務は、学校保健の三つの領域「保健教育」、「保健管理」、「組織活動」にまたがり、保健に関する専門職として学校関係者、児童生徒、保護者や地域の住民の皆さんと連携を図りながら、子どもの健康づくりのために活動をする事となっております。

2)委嘱

学校が国立、都道府県立、市町村立の別により、文部科学省、都道府県教育委員会、市町村教育委員会が学校歯科医を委嘱しています。

3)身分

非常勤の委嘱的性格を持つ公務員です。

4)報酬

地方交付税の中で報酬の基準額が示されていますが、現状では、その支払額や方法は様々です。

5)公務災害補償

公立学校の学校歯科医が公務上の災害を受けたときには補償がなされます。

3.学校歯科医の仕事とは

学校歯科医が学校の中で受け持つ仕事は、「保健教育」、「保健管理」、「組織活動」にまたがっています。

1)歯科保健教育

歯科保健教育に関する具体的な仕事としては、次のようなものがあります。

(1) 歯科保健に関する事柄について、学習や保健指導などに必要な教材や資料の提供及 び助言を行います。
(2) 歯科保健に関する事柄について、学校行事や特別活動の指導に必要な教材や資料の 提供及び助言を行います。

2)歯科保健管理

歯科保健管理に関する仕事は、学校歯科医の基本的な仕事であり、次のようなものがあります。

(1) 歯・口の健康診断(定期・臨時・就学時)を行い、処置(予防と治療)及び保健指 導を要する者をスクリーニングします。
(2) 歯・口の健康相談を行います。
(3) 歯・口の疾患の予防処置及び保健指導を行います。
(4) 健康診断時に個別の歯科保健指導を行います。
(5) 事後措置として健康診断結果に基づいてCO・GOを選別し、疾患の予防や治療措置 が必要な者には指示します。
(6) 事後措置の一環としてCO・GOなどを有する者に対し継続的な観察や指導を行い ます。

3)組織活動

組織活動に関する仕事としては、次のようなものがあります。

(1) 「学校保健安全計画」の立案に際して、歯科保健の部分についてはもちろん、より 広い見地から学校保健全般について意見を述べます。
(2) 学校保健委員会・地域学校保健委員会へ参加し、学校・家庭地域の人々と子どもの 歯・口の健康づくり推進や、健康に関する課題について提言したり意見を述べます。
(3) 学校保健関係者(教職員、学校医、学校薬剤師)とのコミュニケーションを図り、 子どもの健康づくりを推進するための協力体制を築く事が大切です。このためには学校歯科医本来の仕事の他、運動会、入学式、卒業式等学校行事や地域の行事に積極的に参加することが望ましいとされています。

4.これからの学校歯科医にはこんなことが期待されています!!

生きる力を育むために歯科保健教育がより重視されるようになった今日では、学校歯科医は従来からの歯科保健管理はもちろん、より積極的に教育に関与することが推奨されてきています。

また、「健康日本21」、健康増進法の制定等で、学齢期はライフステージの中の重要な時期として、各学校が子どもの健康の保持増進を責務を負うことになりました。このような現状から、学校歯科医が保健の専門家として積極的に学校教育に参加することが求められています。平成23年8月に制定された歯科口腔保健の推進に関する法律の成立により、学校歯科医にも、多くのことが期待されています。

○保健教育では
学級担任、養護教諭とともに歯・口を教材とした学習指導案を作成し、指導しましょう。
子どもに対しての直接講話や、食生活指導、ブラッシング指導などを行う機会を増やしましょう。
○保健管理では
CO・GOの継続管理結果を評価し、教育的効果が望めるよう再度適切な方法を指導しましょう。
健康診断結果にとらわれず、子どもが悩んでいる問題について健康相談を行うように努めましょう。
○組織活動では
保健所、地域歯科医師会、地域学校歯科医会、町内会・自治会などと連携して子どもの 健康づくりが円滑に推進できる環境整備を働きかけましょう。

学校歯科医や歯科衛生士が教育に参加していることは、子どもにとって新鮮であり、ふだんと違う新しい知識や教育方法は、子どもの知的好奇心を刺激し、学習を豊かにする効果が期待できます。

2.(一社)日本学校歯科医会とは

学校歯科保健の専門団体で、子どもたちの歯・口の健康づくりを支援する学校歯科医が組織する団体です。

3.学校歯科保健とは

学校歯科保健は、歯・口腔を通し、保健教育と保健管理の協調の中で「心身ともに健康な国民の育成を期する」活動です。学校での「歯・口の健康づくり」は、問題発見・解決型学習を主体とした保健教育の題材として優れているとともに、人間性の陶冶にも優れています。また、子どもたちの「生きる力」の育成に重要な活動です。歯・口の状態は、子どもたちの生活習慣の状況を反映することから、学校歯科医による健康診断に基づいて、学校保健計画の立案や的確な事後措置を実施することが大切となります。保健指導を掌ることで公衆衛生の向上および増進に寄与するとの歯科医師の職務は歯科医師法に示されているところですが、学校歯科医としての職務執行については学校保健安全法に示されています。近年では、学校歯科医は学校の非常勤職員として健康教育にも積極的に参加することが望ましいとされています。

すなわち、近代学校歯科保健の中で学校歯科医は、医療者の立場だけでなく、教育者の立場の視点を持っていなければ職務を全うすることはできないと考えられています。 図2(日本学校歯科医会発行:学校歯科医の活動指針(改訂版)、p4〜25)

4.学校歯科医の歴史

1920(大正9)年に改正された「学生生徒身体検査規程」において、「学校医以外の医師又は他の適当なるもの」が身体検査を行えるようになりました。これにより各地で歯科医師による学校歯科検査が行われるようになり、1931(昭和6)年には「学校歯科医及幼稚園歯科医令」が公布され、ここに制度上、学校歯科医が誕生しました。昭和6年6月22日にこの制度ができたことを記念して、6月22日を学校歯科医の日と定めました。

(参考文献:日本学校保健会HP)

5.かかりつけ歯科医との違いは

学校歯科医が行った健康診断に必要な治療や指導、教育を事後措置といいます。

医療的な事後措置は地域のかかりつけ歯科医が行います。

しかし、すべてをかかりつけ歯科医に委ねているわけではありません。学校歯科医も主に教育的な事後措置を行い、管理だけでなく健康教育にも対応して、子どもの健康の保持増進を図っています。

子どもの健康がより向上するためには、学校歯科医と地域のかかりつけ歯科医は十分な連携をとることが大切です。

( 参考文献:日学歯普及リーフレット・日学歯学校歯科医基礎研修テキスト)

6.学校と家庭・地域との連携の中で学校歯科医の役割とは?

学校歯科医は、みなさんの園や学校を訪れて、歯科健康診断をすることはご存知だと思います。その他に養護の先生や担任の先生と一緒に、むし歯や歯周病のことについて、どうしたらむし歯や歯周病にならないか?歯みがきの仕方や、間食を含めた食習慣など食育の授業をすることがあります。

学校で、歯のみがき方を始め、むし歯や歯肉炎などの病気の予防、食生活のあり方など、歯・口の健康づくりに必要な基礎的なことを理解してもらうようにすることも、学校歯科医の仕事です。そして、ご家庭でしっかりと実践できるように、「ほけんだより」や「学校保健委員会」などで、専門家として、指導助言するとともに健康相談や保健指導を行っています。時には、保護者参観日やPTAの会でもお話をしたりすることもあります。なぜなら、子どもの歯・口の健康に対する望ましい態度と習慣は、特にご家庭の影響が大きいからです。

これから、子どもさんの発達段階に沿ってポイントをお話しますが、やはり、家族全員が健康的な生活習慣や食生活を実践していくことが、とても大切といえます。

①幼稚園

家族そろって楽しく食事をする中で、食べ方の基本が自然に身につくようにします。また、家族そろって歯みがきをするなど、保護者がお手本を示したり、仕上げみがきをしたりしながら、みがき方を教えるようにしましょう。また、「歯みがきカレンダー」などを使って、子どもが自ら歯みがきに取り組み、習慣化していけるようにすることが大切です。

②小学校

偏りなく何でも食べることができるようにお料理を工夫するとともに、歯・口の健康に良い食品を加え、十分噛んで食事をする習慣ができるようにしましょう。また、基本的な生活習慣づくりの一環として、食後の歯みがきの習慣が定着するようにすることも大切です。歯みがきや間食のとり方などについて、家族みんなで話し合い、家族ぐるみで実践していきます。

③中学校・高等学校

朝食の欠食、飲料類の多飲、夕食後の食事、いわゆる夜食の取り方や間食の習慣などに対して、望ましい生活行動ができるように協力的な態度で接することが大事です。口臭、顎関節の痛み、歯並びについて悩みを持つ生徒や、飲酒、喫煙、薬物乱用など問題を抱える生徒に対しては、家庭や学校と連携して改善が図れるようにすることが重要です。

また、学校の中だけでは、歯・口の健康づくりを進めることには限界があり、学校歯科医がコーディネーター役となって、地域の医療機関や関係団体や行政機関とも協力し、子どもが日々継続して歯・口の健康づくりを実践していけるようにすることも大切な仕事です。

また、地域学校保健委員会へも積極的に参加し、その地域の他の学校や様々な関係機関の協力の下に、歯・口の健康づくりに関する普及・啓発を図ります。

外部から歯科保健指導のゲストティーチャーとして専門医や地域で、8020を達成された方を招いて、話をしてもらうような窓口となります。

また、学校歯科医とかかりつけ歯科医の連携で最も重要なのが、健康診断後の事後措置に対する役割分担と言えます。「健康診断結果のお知らせ」を持った子どもは、地域のかかりつけ歯科医を受診します。かかりつけ歯科医にも、CO・GOといった学校歯科の専門知識を理解してもらい、その対処方法を地域の歯科医師全員に徹底普及する必要があります。

学校歯科医は、CO・GO等注意深く観察指導する必要のある子どもに対して、その子の状況に応じた生活習慣の改善や歯みがき法を指導し、健康相談を行うなど事後措置を行わねばなりません。また、学校やクラスなどの集団の課題については、管理だけでなく保健教育を行い、子どもの健康の保持増進を図る役割があります。

学校歯科医がこうした責任を果たし、かかりつけ歯科医が子どもの個々の状況に応じて学校歯科医と連携を密にとり、診療室で管理していくという連携によって、「卒業後も自己管理と定期的な専門的管理を自発的に行える子どもの育成」ができるようになります。

7.学校健康診断とは?

私たち学校歯科医は、みなさんのお口の中にむし歯や歯肉炎がないか?歯並びやかみ合わせに異常がないかどうか? 年に一度は、みなさんの園や学校を訪れて歯科健康診断を行っています。場合によっては、年に2回以上するところもあります。

学校で行う健康診断は、歯やお口の病気で、勉強に集中できなかったり、おいしく給食が食べられなかったりしないようにするためのものです。

その健康診断の結果、治療が必要な人は「要治療」として、健診用紙の(2)にマークが付きます。また、このままだと病気になる危険がある場合には、注意して様子を見ていかなければならない人として、「要観察」の(1)にマークが付きます。異常がなし、または「健全」な場合は(0)にマークが付きます。

このような学校の健康診断は、単に病気を見つけるためだけのものではなく、しっかりと歯みがきをしなくてはいけない人や甘いものを控えたり、とり方に注意しなければいけない人たちを見分けるために行っています。みなさんを「スクリーニング」というふるい分け(選別)をします。その結果、治療の必要な人は、「かかりつけの歯医者さん」で治療をしてもらうように、また、「要観察」の人はしっかり歯みがき指導を受けたり、甘いものや食事のとり方を教えてもらい、病気にならないように予防しなければいけません。

学校での健康診断は、みなさんの健康状態を把握し、健康であるか? 健康上問題があるか? 病気や異常の疑いがあるかを選び出すためのものです。

それとともに、むし歯や歯肉炎にならないようにするにはどうしたらいいか?健康であるためにはどんな生活をしたらいいのかという勉強をする機会でもあります。

平成6年に検査の項目が改められて、むし歯「C」ではないが、続けて観察したり、しっかりと予防処置をしないといけない要観察歯「CO」という段階や、歯肉炎「G」ではないが、歯肉炎になりそうな人、要観察者「GO」というふるい分けが新しく入りました。このそれぞれ「O」と付いているのは、ゼロではなく、観察を意味するobservationの頭文字の「O」からとっています。

そしてさらに平成21年、学校保健法が学校保健安全法に変わり、それに合わせて健康診断もまた変わるようになっています。

歯科保健は、実際にお口の中が見えるため、皆さん一人ひとりの歯の状態にあったみがき方や食物の食べ方についていろいろ教えてもらうことにより、子ども達の自分で自分を管理する能力を育てることができるので、健康に関する教育にとって重要な役割を果たしていると言われています。その一方で、学校歯科保健では、むし歯だけでなく、歯周病、歯肉炎、歯列咬合(しれつこうごう)なども、これからはより注意することになっています。以前からすると、お口の中の状態も大きく変わってきており、養護の先生や学校歯科医も健康相談や保健指導するようになってきています。

特に、学校の歯科健康診断のむし歯や歯肉炎の結果など、歯や口の健康課題だけではなく、子どもの健康そのものの保持増進を図るという取組が必要になってくるようです。

すなわち、生活習慣病の予防という面に注目し、歯科検診は、病気を見つける「疾病発見型のスクリーニング」ではなく、「健康志向型(健康増進)型のスクリーニング」であることに意義があると言われています。

今後は、歯列咬合(しれつこうごう)や顎関節も、重要な検診項目となります。これらは、「食べ物をとり込み、食べる」機能、「表情を作り、話す」機能、及び「運動を支え、体のバランスをとる」機能に直接関係し、生活の質に関わってくるため、学校歯科医はもちろん、養護の先生をはじめとする学校の先生にも、その重要性の共有が求められています。

学校歯科健康診断は、むし歯や歯肉炎などの病気をスクリーニングするためだけの検診ではなく、より健康を増進させて行くための健康教育が重要視される方向に進んでいます。

一般社団法人 日本学校歯科医会 齋藤 秀子

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