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「矯正歯科」について

正しいかみあわせで何でも美味しく食べられることは健康の基本です。そして、きれいな歯並びで大きく口を開いて笑うことは、心を豊かにし、周りを明るくします。 歯がデコボコしていたり、上下できちんとかみ合っていないと、食べ物をうまくかむことができません。歯磨きの時に、磨き残しも多くなるため、ムシ歯や歯槽膿漏、口臭の原因ともなります。また、自然に、楽に、噛めなくなるとアゴの関節にも悪い影響が出たり、食べ物を飲み込む時の舌やのどの動きにも異常が出ます。そして、将来、歳をとって入れ歯を使うようになった時、歯がはえていた骨の部分にズレが残っていると、何度作り直しても、いい入れ歯が作れなくなってしまいます。 また、人によっては、歯ならびが悪いことでコンプレックスを抱いたり、発音に支障があったりと、コミュニケーションに不都合を生じることもあります。

『歯並びは、想像以上に皆さんの健康に、一生に渡って関係しております。』

矯正歯科では、歯ならびをきれいにそろえることで、上下の歯のかみあわせや歯の周りの骨の状態を改善し、子供から大人に至るまでの口と心の健康をもたらすお手伝いをさせて頂きます。

Q1 いつから始めたらよいの?

矯正歯科治療を開始する時期は、患者さんの歯ならびやかみ合わせの状態、年齢などによって大きく異なります。

まず、食べる時に、アゴが楽な場所で、じゃまされずに動いているかをチェックします。アゴを前後左右にズラさないと噛めない場合には、乳歯の時期でも治療を開始することがあります。 歯のデコボコがひどくなりそうな場合や出っ歯になりそうな場合も、成長する力の残っている若い時期であればより積極的な治療が可能となるため、早目に矯正歯科を受診されるようお勧めします。 また、アゴの骨の大きさに問題のある受け口(骨格性反対咬合)などで、骨の成長を見極め、タイミングを選んでコントロールする必要がある場合には、治療の時期を何回かに分けることもあります。 さらに、若い時にはきれいな歯ならびであっても、年齢とともに歯ならびは変化します。とくに、親知らずに押されたり、むし歯で歯を失くしてから長い期間ほうっておいたりした場合には、かみ合せは大きく変化します。そのような、中高年になってから生じた歯ならびやかみ合わせの不正に対しても矯正治療が必要となります。 なお、矯正治療によって歯を移動させることは何歳になっても可能ですが、その際、特に歯ぐきや歯を支えている骨が健康であることが必要な条件とされます。

Q2 どんな歯ならびや、かみあわせだったら治療するの?

矯正歯科治療の対象となる不正な歯ならびやかみあわせには、次のようないろいろなものがあります。

・叢生(そうせい):乱ぐい歯、八重歯など、歯が重なってならんでいたり、一部の歯が歯列の外に飛び出している状態。

・上顎前突(じょうがくぜんとう):出っ歯、上のアゴや前歯が前に出ていて唇が閉じにくい状態、指しゃぶりの癖が原因の場合もあります。

・反対咬合:うけ口、下のアゴや前歯が上の前歯より前に出ている状態。

・開咬:奥歯でかんでも前歯がかみ合わない状態。

・過蓋咬合(かがいこうごう):下の前歯が上の前歯に隠れてしまうほどかみ合わせが深い状態。

・空隙歯列(くうげきしれつ):すきっ歯、歯と歯の間にすきまがある状態。

・顎変形症(がくへんけいしょう):手術が必要とされるほど上下のアゴが極端にズレていたり、変形している状態。

・先天異常による不正咬合:唇顎口蓋裂など。

・その他 かみ合わせが不安定なもの・顎関節症に関連するもの

Q3 どのくらい期間がかかるの?

年齢や症状によって異なりますが、矯正治療はアゴの位置や大きさをコントロールしたり、アゴの骨の中にある歯を動かしたりするため、ある程度の年月を要します。最近は治療技術や材料の進歩により治療期間は短縮されてきていますが、成人の場合、1〜3年程度かかる場合が一般的です。また、治療後には後戻りを起こさないように、移動した歯をその位置に安定させる保定(おさえておく)期間も必要となります。 また、子供における受け口や出っ歯など、上と下のアゴの位置や大きさに問題があってアゴの成長をコントロールする場合には、治療期間は数年に及ぶこともあります。

Q4 どんな装置を使うの?

矯正歯科治療には様々な種類の装置を使います。大まかに分類すると、歯の表面に接着する装置(固定式)と自分で取り外しができる装置(可撤式:かてつしき)があります。

固定式の代表的な装置はマルチブラケット装置です。これは、ひとつひとつの歯に小さなブラケットと呼ばれる装置を接着し、そこに細いワイヤーを通して歯を動かすための力を発生させます。透明なプラスチックあるいはセラミック製のブラケットもよく使われます。 可撤式装置は、患者さん自身で装着したり取り外したりできるものです。主に、かみ合わせの位置やアゴの成長を誘導する装置や部分的な歯の位置を治す場合などに用いられます。最近では、無色透明な取り外し式の装置もあります。 それぞれの歯並びによって使用する装置も異なります。どのような装置が適しているかは、矯正歯科で相談するようお勧めします。

Q5 矯正歯科治療は痛いと聞きましたが?

矯正装置を初めて入れた時や、装置を調整した後などに、歯がすこし浮いたような感じや、硬いものがかみにくかったり、痛みを感じる場合もあります。程度は人によって様々ですが、通常2日程度で治まる方が多いようです。最近の治療法の進歩により、弱い力で治療するため、以前よりは痛みなどの不快な症状は軽減してきています。

Q6 通院の頻度はどれぐらい?

歯を動かしている間は、矯正装置の調節のため 1カ月に1回程度通院することが一般的です。
また、歯を動かし終わっても、歯は骨の中でまだ安定せず元の位置に戻ろうとするため、治療後もしばらくの間は、数カ月毎の程度で通院して、かみ合わせを管理してもらう必要があります。
乳歯から永久歯への交換期や、顎の成長の定期的な観察の間は、 3カ月〜1年毎の通院となることもあります。

Q 7 食べ物に制限はあるの?

ほとんど普段どおりに食事ができます。ただし、硬い物(おせんべいや飴玉・氷の丸かじり)や粘着するもの(ガムやキャラメルなど)などは、固定式の装置を壊す恐れがありますので避けるようにしてください。 また、食べ物が詰まりやすくなりますので、歯磨きを丁寧に行う必要があります。

Q 8 装置をつけているとむし歯になりやすいの?

矯正歯科治療では、矯正装置を長期に装着するため、むし歯や歯ぐきの炎症、また口臭などを生じる可能性があります。 その対策として、歯科医師らによるブラッシングなどの清掃指導や食習慣の指導をしっかりと受け、いつもお口の中を衛生的に保てるよう、ご家族のご協力もいただき、ご自分の責任で管理することが大切です。 ゆっくりと丁寧に時間をかけて、鏡を見ながらブラッシングして下さい。

Q 9 歯を抜かなければなりませんか?

歯を抜くか抜かないかについての判断は矯正専門医にとっても大変重要なことです。歯を動かしてきれいにならべるには、そのためのスペースが必要です。

デコボコしている歯を動かしてきれいにならべるためには、スペースが必要です。 歯を抜かないで治療を行うときには、歯列の幅を広げたり、奥歯から順次後ろへ移動させたりしてスペースを獲得しますが、アゴの大きさによってはその量は限られています。限界を超えてしまうと、かえって後戻りなどの弊害が起こることがあります。そのような場合には歯を抜く必要があります。 矯正医では、歯列模型やさまざまなレントゲンを用いて、歯のデコボコの程度やアゴの骨の大きさ・かたち、歯の萌出方向や位置などを確認し、審美的な面も含め、総合的に診断します。その時には、出来るだけ歯を残すようにと考えますが、どんな場合でも絶対に歯を抜かない、という治療はあり得ません。ご注意ください。

Q 10 後戻りがあると聞きましたが?

矯正治療で動かした歯は、元に戻ろうとすることがあります。したがって装置をはずした後にも、数年の間、保定装置などを用いて管理をする必要があります。この時期に保定装置の使用を怠ると、後戻りが起こることがあります。 一方、矯正治療の経験の有無にかかわらず、加齢による変化や歯周病などによって、歯ならびやかみ合わせは変わり続けます。その意味では、一生をかけて常に管理していくことが大切です。

Q11どれくらい費用がかかるの?

矯正歯科治療は、一般的に保険はきかず自費の支払いです。その費用は、医療機関、治療方法、期間により異なり、また地域によっても異なります。

しかし、唇顎口蓋裂を含む一部の先天異常が原因で生じた異常なかみ合わせの場合や、顎変形症 (アゴの手術を必要とする重度なかみ合わせの異常) と診断された場合にのみ健康保険が適用されます。ただし、保険適用の矯正治療は、一定の施設基準を満たし、必要な届出を行っている診療所で行っています。

治療のご相談時に、納得のいくまでお尋ねすることをお勧めいたします。

Q 12 どこに相談に行ったらいいの?

歯ならびやかみ合わせが気になったら、矯正歯科専門の歯科医院や大学附属病院の矯正歯科の受診をお勧めします。また、そのような複数の医療機関に相談され、セカンドオピニオンを求められてもよいでしょう。 日本矯正歯科学会では一般市民の皆様に適切な矯正歯科治療を提供するために、矯正歯科に関する充分な学識と経験を有する歯科医師を学会が認定しています。 学会が指定する研修機関 (大学病院等)において、5年以上の矯正歯科臨床経験を持ち、学会の審査に合格したものが「日本矯正歯科学会認定医」です。 さらに12年以上矯正歯科診療に専従し、学会の審査に合格した経験豊富な歯科医師が「日本矯正歯科学会専門医」です。 日本矯正歯科学会ホームページ上で、「日本矯正歯科学会認定医」ならびに「日本矯正歯科学会専門医」を検索することができます。

昭和大学歯学部歯科矯正学教室 教授 槇宏太郎

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