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成人の対応

成人の嚥下障害の対応について教えてください

目標は障害前の嚥下機能を取り戻すことですが、原因疾患や病気の程度によっては現状を維持することを目標とする場合もあります。対応法としては嚥下機能そのものを改善させる目的で行う機能訓練法、飲み込みの流れを変える工夫により障害を改善させる代償的方法、および外科的方法とがあります。

このうち機能訓練法と代償的方法について紹介します。

1)機能訓練法
機能訓練法は、嚥下に関連する様々な部位の動きの範囲、速度、強さ、タイミングなどを改善し、嚥下障害を改善するための方法です。これらの目的を達成するための訓練法のうち、食べ物を嚥下しながら行う訓練法を直接的方法、食べ物を使わない訓練法を間接的方法といいます。専門家が診断して必要な機能訓練を指導します。多くの機能訓練法がありますが、ここでは代表的な機能訓練法として舌の抵抗運動訓練、頭部挙上訓練、嚥下法訓練を紹介します。
  • 舌の抵抗運動訓練
    スプーンや指などで舌に負荷をかけ、10秒間程度抵抗することにより舌の動く範囲と筋力を同時に改善する方法です。5回〜10回を1セットとし、1日3〜5セット行います。

  • 頭部挙上訓練
    仰向けの姿勢で「つま先」を見るようにして頭のみを起こします(写真6)。1分間、頭をその位置で静止し、次に1分間仰向けで休むことを3回繰り返します。その後、頭の挙上運動を連続的に30回行います。以上を1セットとし、一日3セットを6週間継続します。本訓練により嚥下時の喉頭(のど仏)の挙上が増加し、嚥下障害が改善するとの報告があります。
  • 嚥下法訓練
    嚥下法は意識的に飲み方をコントロールする方法です。嚥下障害の原因や部位によって適切な嚥下法を選択します。嚥下法を練習するには唾液を飲みながら訓練します。嚥下時に息をこらえ、気道を閉鎖する息ごらえ嚥下法、嚥下時の舌の送り込み運動を強化する努力嚥下法など数種類の嚥下法が考案されています(写真7、8)
2)代償的方法
代償的方法は食べ物の流れを調整し、誤嚥(気管内に造影検査食が流入すること)などの嚥下障害の症状を改善させる方法です。
  • 姿勢調節法
    首や体の角度や位置を調節して食べ物の流れを変えることにより嚥下障害を改善させる方法です。代表的な方法として顎引き姿勢、健側傾斜姿勢、頚部回旋姿勢などがあります。
  • 嚥下調整食
    食べ物の物理的性状を調節して、食べ物の流れやばらつき方を変えて嚥下を容易にする方法です。液体に粘性(トロミ)をつけるための増粘剤は多くの市販品があり、また最近では、嚥下しやすいように調理した食品や酵素処理した食品などが数多く市販されています。

  • 嚥下補助装置
    歯科的技術を用いて製作した装置により嚥下障害を改善する方法があります。代表的なものに舌接触補助床があります。舌接触補助床は舌がん術後や脳血管疾患などで舌の動きが障害された患者さんに適用する特殊な形態の装置です(写真7〜9)

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