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歯科医院での仕事

多くの歯科医師は自分で開業した歯科医院で働いています。歯科医師の治療する内容は大きくいくつかに分けることができます。

○むし歯や歯ぐきの病気の予防
  • むし歯や歯ぐきの病気にならないように、歯みがきの指導や予防のための処置をします。
○むし歯を治療すること
  • むし歯になってしまった部分をとって、そこに他の材料をつめます。
  • むし歯で歯の神経(歯髄)まで傷んでしまった場合は、神経をとり、それに代わるものをつめます。
○歯ぐきを治療すること
  • 歯ぐきの病気(歯周疾患)の原因となっている歯垢、歯石をとりのぞいて歯ぐきの健康な状態を保つようにします。
○むし歯や歯ぐきの病気などで歯を抜くこと
  • むし歯や歯周疾患でひどく傷んでしまったら歯を抜くこともあります。
  • 親知らず(智歯、第三大臼歯)が正しい位置に萌出しないで腫れたりする時も抜歯したりします。
  • 逆にケガで抜けてしまった歯を元に戻すこともあります。
○歯だけでなく、あごの関節が痛んだり、開きにくくなったりする顎関節症という病気の治療もします。
○むし歯や歯ぐきの病気で失った機能の回復
  • むし歯や歯周疾患で、歯が大きくかけてしまったり、歯を抜いたりして、かめなくなった時、歯にかぶせものをしたり、歯が抜けたところに橋を架けるように治療したり、取り外しのできる部分入れ歯や総入れ歯を作ったりします。
  • 人工の歯根(インプラント)の治療をすることもあります。
  • 高齢や脳卒中などで、食べたり飲み込んだりする機能(摂食嚥下機能)がおとろえてしまった場合にはその機能回復の治療や訓練をすることもあります。 この摂食嚥下機能は年齢とともにおとろえることがありますのでお口の体操などで機能維持を図るとよいでしょう。
○歯並びをなおす
  • 受け口や出っ歯などいろいろな歯並びの問題をなおすこともします。
  • 歯並びの治療(矯正治療)は専門に行っている歯科医師が多いので、かかりつけの歯科医師にご相談ください。また、子どもの治療を専門に行っている歯科医師もいます。

歯科健診

歯科健診には法律で決められているものがいくつかあります。なじみが深いものでは、1歳6か月児歯科健診と3歳児歯科健診があります。これは「母子保健法」により決められており、全国の各地方自治体(市区町村)に義務付けられていて、歯科医師が健診を行います。またそのとき行われる歯科保健指導にも協力したりします。国の「健やか親子21」の取り組みの中でも歯科の目標の「むし歯のない3歳児の割合80%以上」は目標を達成しました。乳幼児のむし歯は少なくなりましたが、さらにむし歯を減らすために国が定めた健診以外にも、2歳児頃に歯科健診や歯科保健指導を独自に行っている地方自治体も多くあります。

また学校歯科健診も「学校保健法」で決められており、義務教育期間は必ず学校歯科医が歯科健診を行います。

一般の方にはほとんど知られていませんが、労働安全衛生法では、塩酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、フッ化水素、黄りんその他の歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務に従事する場合には雇入れの際、業務への配置換えの際、業務についた後6か月以内ごとに1回定期的に歯科医師による健康診断を行わなければならないと決められています。

普通の会社(事業所)に勤めている場合でも、年1回は健康診断を受けますが、これには歯科健診は含まれていません。しかし事業所独自で歯科健診を行っているところも多くあります。また6か月以上海外で勤務する場合も健康診断を行わなければなりませんが、歯科健診は義務付けられていません。しかし海外での生活で不安に思うことの上位に歯科治療のこともあげられています。

日本歯科医師会では「海外派遣労働者のためのお口の健康手帳」を作っていますので参考にしてください。

歯を失う大きな原因の一つである歯周病の健診も自治体によっては行われています。主に40歳50歳60歳などの節目の年に歯周病やむし歯の歯科健診を行っている市区町村もありますので、お住まいの市役所、町役場、歯科医師会などに問い合わせてみてください。

またこういった歯科健診以外にも妊婦の歯科健診を行っている自治体もあります。このように様々なケースの歯科健診の場で歯科医師が活躍しています。

休日急患事業

歯科診療所の多くは、個人開業の歯科医院のため、日曜、祝祭日、年末年始などの休日や、夜間の診療に対応している診療所が少ないのが現状です。そこで各都道府県歯科医師会や地域の歯科医師会が単独で、または、行政と協力したりして診療所を開設し、休日夜間の歯科診療を行っているケースがたくさんあります。また診療所がない場合でも、地区の歯科医師会の歯科医が輪番制(順番に担当する)で休日夜間の診療を行っている場合があります。お住まいの地域の歯科医師会や、市役所などのホームページ、または広報誌などで確認してみてください。このような診療所は応急処置が中心となることが多いですから、かかりつけ歯科医をもつことや定期的な歯科受診が重要です。

歯科訪問診療

歯科治療は必ずしも歯科医院だけで行われるわけではありません。患者さんの自宅や老人ホーム、歯科のない病院などに歯科医師が出向いて治療することができます。日本は世界的に見ても長寿の国ですが、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)は平成22年のデータでは、男性で9.13年、女性で12.68年の差があります。残念ながら平均して10年程度自由に外出できず、歯科治療も受けにくい期間があるということです。歯科医院に通うことができない患者さんのために訪問診療を行っている歯科医師もたくさんいます。一般的な歯科治療、入れ歯の調整などはもちろんですが、お口のケアも行います。日本人の死因の第3位は肺炎ですが、高齢者では特に肺炎でなくなることが多くなります。いろいろな研究結果から口腔ケアを行うことで、肺炎にかかる割合は低くなることが知られており歯科訪問診療の意義は大きいと言えます。またいわゆる団塊の世代が後期高齢者になる2025年には歯科訪問診療の需要はさらに増えると考えられます。みなさんが住みなれた生活の場で安心できる老後を過ごせるように、歯科医師も医科、介護などの多職種と連携して歯科医療を提供していきます。

啓発事業 みなさんにお口のことをわかってもらう

むし歯や歯ぐきの病気(歯周病)は、食べ物の好みや、喫煙習慣など生活習慣に深く関係しています。もちろん歯科医院に定期的に通院するのが、もっともよいことですが、自分自身の生活習慣をよりよくすることでむし歯や歯周病になるリスクを少なくできます。そのため歯科医師は、いろいろなところでみなさんにお話をしています。乳幼児の歯科保健教室や妊産婦教室で妊婦さんやおかあさんにお話ししたり、もちろん学校で児童生徒にお話しをすることもあります。また全身の健康と密接な関係にある歯周病については、市民講座などでお話しすることもあります。まだ少ないですが、特定健診(いわゆるメタボ健診)の結果で行われる特定保健指導の中で歯周病についても指導が行われることがあります。高齢者では食べたり飲み込んだりする機能(摂食嚥下機能)がおとろえることが多いため、老人クラブなどで、嚥下体操などを指導することもあります。

教育・研究機関で働く歯科医師

日本には、12の国公立の歯科大学(歯学部)、17の私立歯科大学があります。

歯科医師になるためには、歯科大学を卒業し、歯科医師国家試験に合格しなければなりません。毎年約2千人の学生が国家試験に合格し、歯科医師になりますが、その学生たちを教えるのも多くは歯科医師です。また歯科大学には大学院もあり、歯学博士を目指す歯科医師も日々研究などを行っています。歯科大学では学生の教育だけではなく、新しい歯科治療法、治療材料、病気の解明などの研究をしています。また歯科大学には付属の歯科専門の病院もあり、様々な治療を行っています。

役所で働く歯科医師

平成23年8月10日に「歯科口腔保健に関する法律」というものができました。この法律には国民が健康な生活をおくるためにお口の健康が欠かさせないことや、日々の生活でむし歯や歯周疾患などのお口の病気を予防することが大切だと書かれています。

また国は国民が健康な生活を送ったり、健康格差をなくしたりするために「健康日本21(第2次)」という目標を定めています。その中に例えば

・3歳児でう蝕がない者の割合が80%以上である都道府県の増加

・12 歳児の一人平均う歯数が1.0 歯未満である都道府県の増加

といった目標が設けられています。

それでは、こういった目標を達成するためにはどうすればよいのでしょうか?「歯科口腔保健に関する法律」では、こういったことも歯科医師の仕事としてあげられています。でも歯科医師個人の力では、とても国民みなさんの健康をまもることはできません。そこで国や県などの役所にも歯科医師がいて、みなさんのお口の健康をまもる方法を考えています。そして日本歯科医師会や、各県、各地域の歯科医師会などの歯科医師と力を合わせて、国民のお口の健康の維持と増進のためにがんばっています。

また平成25年12月27日現在で各県独自の歯科保健に関する条例を作っている都道府県は、38もあり地域独自に住民の方のお口の健康増進に力を注いでいます。

平成24年の統計では、300人近い歯科医師が役所などで働いています。

病院の歯科医師

多くの歯科医師は、自分で歯科医院を開業しています。しかし病院の中には歯科や口腔外科がある病院もあり、そこで働いている歯科医師もいます。そこでは、入院患者さんの歯科治療を行ったり、一般の開業医では、扱いにくい抜歯や、その他のお口に関わる病気、例えばがん等の治療を行ったりしています。また口腔以外のがんでも、がん手術の前後や抗がん剤での治療、放射線治療などの時、口腔のケアを行うことで、がん治療の効果を上げることができるため、歯科医師が活躍しています。このことは、通院中のがん治療でも有効なため、日本歯科医師会では、「全国共通がん医科歯科連携講習会」を行っています。多くの一般の開業歯科医も、がん患者さんに対する歯科医療の質の向上のため講習を受けて、がん治療医科歯科連携を推進しています。

生涯研修事業

歯科医療の分野も新しい治療方法や材料、医薬品など日々進歩しています。その進歩に対応するために歯科医師も研修することが必要です。

日本歯科医師会では生涯研修事業として、様々な研修会を行っています。更に自宅でも研鑽をつめるよう様にDVDなどで研修できるようにしています。

障害者歯科事業

障害者の歯科治療にも歯科医師は取り組んでいます。個人的に障害者の治療を積極的に行っている先生もいます。また県の歯科医師会や地域の歯科医師会で障害者治療を行ったり障害者治療のための研修会を行っている場合もあります。また障害者の治療ができる歯科医院のネットワークを作り治療を希望する障害者の方に紹介したりしている場合もあります。

日本歯科医師会 地域保健委員会 副委員長 羽根司人

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