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歯科診療(検査)で使う放射線の種類

 放射線の中には様々なものが含まれております。有名なものを挙げると、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線、エックス線などです。医科とほとんど同じですが、歯科でも検査のためには、エックス線が主体として用いられています。エックス線が用いられる理由はどこにあるのでしょうか?その1番の理由は取り扱いの簡便さです。他の放射線は、作るのが大変です。また、天然にある放射線(放射性同位元素から放出される放射線)は取り扱いに非常に苦労します。例えばふたをし忘れると、放射線が出っぱなしになることが挙げられ、これは被ばく事故につながります。

  これに対してエックス線は、100Vの家庭用電源から作ることができます。電圧を高くすること(トランスを使います)が必要ですが、基本的にはコンセントを差し込んで、タイマー(一定のエックス線が出るとそこでスイッチが切れるようなタイマーです)を設定し、スイッチを押し続けるだけで、設定した量のみ、エックス線が放出(照射)されます。故障でもしない限りエックス線のそれ以上の放出はありません。また、タイマースイッチも「デッドマン方式」といって、エックス線の放出中にスイッチを切ると、その時点でエックス線の放出が生じなくなる、つまり途中でエックス線の放出を止めたい時には、タイマースイッチを押している指を離せばよいという安全機構が付いているわけです。

  放射線の種類別特徴とそれらの医学(歯学)的応用について簡単に述べてみましょう。

  第一に、アルファ(α)線やベータ(β)線などに代表される質量を持った放射線(粒子放射線と言われます)ですが、これらは持ち運ぶエネルギーが大きく、体の中に留まった時には大きな影響を及ぼすため、特定の部位に生じたがんの治療などに応用されています。また、診断としてもFDG-PETにより、悪性腫瘍の診断などに応用されています。しかしながら取り扱いが困難であったり、特殊な機械が必要であったりするために、歯科の世界では広く応用されるには至っていません。一部の大学でのみ、電子線などを用いた悪性腫瘍に対する放射線治療と、悪性腫瘍を診断するためのFDG-PETが用いられている程度です。場合によっては、RIA(ラジオ・イムノ・アッセイ)と呼ばれる検査に応用されていますが、これは例えば血液中の微量含有成分の分析などに血液採取の後に行われるものであり、患者さんの被ばくとは関わりがありません。

 第二に、エックス線に代表される質量のない放射線(電磁放射線と言われます)ですが、こちらは体に対する影響力がさほど大きくないために、またコントロールしやすいためもあり、比較的安全に使うことができます。通常のエックス線撮影、放射線治療一般などに用いられています。


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