
大島 ありがとうございました。それでは、辻先生、よろしくお願いします。
辻 1回目、2回目、欠席いたしまして、まことに失礼いたしました。私は現在、東京大学の高齢社会総合研究機構というところで、言ってみれば高齢化の研究に取り組んでいます。
一言で言えば、これから20年間で日本は後期高齢者、75歳以上の人口が1千万から2千万に倍増する。これは世界史的に見ても、まったくどこも経験したことのないことです。これにどのように対処したらいいのか。私が言うのも変ですが、予測をし、対応できることは整理されていません。
その中でいろいろ取り組んでいるわけですが、どういう社会かというと、一つはまず元気ということです。できる限り元気でということです。いままでの治療モデルは重要な日本の歯科医療の役割でしたが、生活習慣病の予防、介護予防といった予防モデルを加えていかないと高齢社会は健やかな社会とは言えません。
そのときに、介護予防は非常に重要なことになります。しみじみと思うのですが、食べる、動く営みを怠ると要介護状態になります。年を取っても食べることがものすごく大事だと、最近しみじみ思っています。その場合、食べることをどのように最後の最後まで実現していくのか。この仕事がまことに大事だということで、最近、改めて歯科の役割に注目しています。
介護予防と食べることが大切なのは当然ですが、人間は最後は死ぬわけですが、生きていたらいいというものではない。生きているときに幸せでないと生きている甲斐がないわけですが、私は二つの思い出があります。
一つは二十数年前に老人福祉課長をやっていましたが、寝たきりのお年寄りがNHKのテレビに出ていました。そのころはみんな簡単に寝たきりになりました。つくられた寝たきりです。大変元気な寝たきりのお年寄りでした。
当時、寝たきりになったら人生おしまいじゃないかと思ったりしていました。それが、取材された方がそのお年寄りに「どうですか」と聞いたら、「いやあ、食べるものはおいしい。食べられる限り、私は生きていたい」とおっしゃったのをまざまざと覚えています。要するに、幸せを噛み締められるような人生でなくてはいけないと思いますが、食べることは非常に大事です。
もう一つの強烈な思い出は近親のものです。何とかならなかったのだろうかと思いますが、最後に非常にひどい口内炎になりました。痛くて痛くてたまらないし、ものが食べられない。耐えられなくなって「病院へ行く」と言って入院したのですが、口内炎の痛みは止められなかったのです。それがわかった途端に「帰る」と言って退院して、その後、従容として死に向かいました。要するに、食べることがかなわぬと思ったときに、生きる気力を失ったのです。
そういうことで、食べるということをこれから本当にみんなで考えていかなくてはいけない。そうなると、歯科医療は最前線です。歯の治療モデル、プラス食べることを維持するためのさまざまな歯科のご活躍は、国家、国民の幸せのために本当に必要です。その点、この会合でぜひ議論して、国民に訴えていただければと思います。どうも失礼いたしました。
●提言主文に関する討議
大島 ありがとうございました。それでは、議題に入りたいと思います。まず最初に、議長提案についてです。今日、この会議の中で、主文についてはまとめ上げたいというのが私の希望です。
前回、あるいは前々回の議論、そしてこの案を提案させていただいてからのメール等でのやりとりも含め、全体のイメージをA4で見開き4ページくらいにして、主文とここにある「歯科医師に期待する」というメッセージのようなものを含めてまとめたい。主文とメッセージについて1ページ、そのあと根拠になるような解説文を2ページから2ページ半くらいつけてという構成でできればと考えています。
ということで、まず最初に主文についてです。いくつかご意見をいただいたものについては、修正すべきところは修正すると考えています。ご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
宮村 歯科医師側からという感じにはなりますが、項目は別にして議長提案の主文のところ、冒頭の「歯科医療は、これまで『歯』の治療、しかも修復治療に偏った医療を担ってきましたが」は、確かにそういうことは感じますが、修復治療は現在も大事です。私としては、「歯科医療は、これまで『歯』の治療、<特に修復治療を中心とした医療>を担って」か、あるいは「これまで『歯』の治療のうち<主に修復治療を中心にした医療>を担って」というかたちにしていただく。つまり、「偏った」が気になります。決して偏っていたわけではないと思いますので、提案させていただきます。
大島 ありがとうございます。まったく異論はございませんが、何かご意見はありますでしょうか。ほかにご意見、いかがでしょうか。
中原 「歯科医師に期待する」の1から3番までは抽象的な表現が多いように思いますが、4番目にきて、「経管栄養の検討にあたって」という具体的な項目が出てくる気がします。これについては、私ども歯科のほうでも最近、咀嚼嚥下リハビリテーションという領域が非常に注目されて開拓されています。
ただ、その場合に、喉頭鏡を使用すると耳鼻科の先生方からクレームがつくこともありました。そのあたり(に配慮して)医歯連携がよりうまくいくような表現を取り入れていただければと思います。
大島 ありがとうございます。もちろん医科だけではありませんが、ほかのあらゆる関連職種とうまく連携を取っていくことはきわめて大事なことです。挑戦状を叩きつけるわけではありませんので、そのへんの表現一つで相当具合の悪いことになりうる可能性があるというご指摘かと思います。これに関して、何かご意見はありますか。はい、どうぞ。
渡辺 いまのことに関連して細かいかもわかりませんが、介護福祉法の改正によって介護福祉士も経管栄養と痰の除去ができるようになりました。これも表現の問題ですが。
大島 介護福祉士については、いま検討中です。
渡辺 検討中ですから、経管栄養についてこういうふうにコメントをするなら、医師と歯科医師だけが議論するととらえるのはちょっと問題なのかなという気がしました。ここに関して言えば、「福祉職も含めて」という気がしました。上の2番目の多職種とうまく関連して表現したほうがいいのかなという気がします。
大島 ありがとうございます。はい、どうぞ。







