
渡辺俊介委員(国際医療福祉大学大学院教授、東京女子医科大学医学部教授、元日本経済新聞社論説委員)
三十数年前から厚生省、医療問題を担当してきたが、ほとんどのメディアが日歯の(会館の)場所さえ知らなかった。厚生省の記者クラブでも(日本歯科医師会が)市ヶ谷にあることを知らないくらいだった。メディアの不勉強もあるが、日歯側の広報も不十分だった。今回、いろいろな分野の方を集められたのは大変有意義なことだと思う。
民主党政権のマニフェストを読んでも、歯についてはほとんど何も触れられていない。医療のことはA4で8ページ、マニフェスト詳細版があるが、抽象的な部分も多く、はたしてどこまで実行するものか、不透明なところもある。政権が医療政策について明確な方針を出していないということは、逆に言うと、ある意味でいいチャンスだ。民主党の議員の中にも、医療に強い関心を持っている人はいる。歯の重要性をPRしていく、いいチャンスだと思う。
この国民会議で具体的かつわかりやすい提言をする。対政権、国会議員だけではなくて、広く国民、あるいはメディアを通して伝えていくいい機会だ。私自身も、これからの会議で具体的にいろいろなことを発言させていただきたい。
浅井文和委員(朝日新聞編集委員)
私は、いま医療担当の編集委員だが、役所(厚労省)よりは、実際に現場のドクターを回って、新しい臨床の記事を書いてきた。しかし歯科の取材はこれまで少なかった。癌、肝炎、糖尿病のように多くの読者が求めている記事がたくさんあるので、いまインフルエンザについて書かなければいけないというように、なかなか歯科のほうに顔を向ける余裕がなかった。
歯科の問題を取材していて感じるひとつの問題は、歯科の場合はどこに情報を求めていったらいいのかわかりにくい。学会の数が多過ぎて、しかもそれぞれの学会がお互いにライバル意識をもっている。どの学会にどう聞けばいいか、外から見ているとなかなかわかりにくくて立ち入りにくい。とくに治療法に関して論争になっている部分もかなりあって、だれが言っていることを信用していいのか。判断しにくい面がある。
新聞記者は毎日記事を書いているわけだが、正確な記事を書きたいと思っているので、わかりにくいものはどうしても先送りしてしまう傾向がある。医療関係の記者を20年間やっているが、そういう意味でいままで足が向かなかったというのが正直なところだ。
今回、こういう機会を設けていただき、大久保会長からのプレゼンテーションについては、なるほどと思うところが多々あった。これからは心を改めて、歯科についてきちんと取材していきたい。
もう一つ患者として、私は歯周病で、この5年間くらい、いろいろなケアを受けており、歯医者さんには非常に感謝している。私はたまたまいい歯医者さんに巡り会い、ていねいに時間をかけて診ていただき、歯科衛生士さんも非常に時間をかけてケアをしてくださって、そのおかげで、悪化した歯周病が、いまはだいぶ良くなってきた。本当に感謝している。しかし、この治療費がとても安い。まじめに先生と歯科衛生士さんが30分かけてケアしてくださって、最後にお支払いする費用を3割負担と考えると、どうみても人件費かつかつという感じがする。まじめにケアして、いろいろ指導してくださる歯科医師、歯科衛生士が報われるシステムをつくっていかないといけない。
辻哲夫委員(東京大学高齢社会総合研究機構教授、元厚生労働事務次官)
大久保会長のプレゼンを聞き、かつてはむし歯を治すことがメインだったのが、こらからは食べることを支えるというように、歯科医療の方法も思想も広がっていることを再確認した。私は医療改革に携わってきたが、(歯科が食べることを支える医療になることは)医療改革の橋頭堡になるだろう。
私は、いまは大学の教員をしているが、行政技術者と自称してきた。行政という技術の専門家である。行政は国民の負託を受けているので、常識から外れたことをやってはいけないが、いまの医療は常識から外れてきている。私たちは皆、年を取って弱って死ぬが、現状では最期まで病院から離れられない。朝から晩まで、「病人である、病人である」と確認され続ける。
年を取るとだれでも病気がちになる、生活者であると同時に病人になるわけだが、ずっと病人として生活したら、本当にすっかり病人になってしまう。どうして自分が自分らしく喜び、おいしいと感じるように、生活が楽しめる医療ではないのか。
結論から言うと、「治す医療から治し支える医療へ」という目指すべき価値の体系は見えてきている。治し支える医療へと変わったときに、当然、生活を診る医療が大切になる。
その中で、医療は家庭医が必要だ。臓器だけ診て、画面でじっとデータを見て、患者の顔をちらっと見て処方箋を書くような医療ではなくて、その人の生活を見続けて、その人の笑顔を求めるような医者が欲しいと思う。
家庭医は、医科では展望が見出せないが、歯科はそのブレイクスルーとなるのではないかと思う。食べることがいかにすばらしいことか。多くを言う必要はないと思う。私はいろいろな近親者の経験で、食べることがどんなに大切なことか実感してきた。それを最後まで確保することこそ、今後の医療の大切な理念だと思う。人生の最期まで残るのは、食べるという行為だ。食べることを支える医療を徹底的に追求しよう。極端に言うと、それが生きがいを支える国民歯科会議の一つのテーマのように思う。
食べるという営みを支えるというのは非常にコンセンサスも得やすいし、歯科界の求心力もつくりやすい。歯科がこれを突破すれば医療改革になるのではないかと思う。
歯科医師は、供給過剰になり、その中から本気になっている迫力を感じる。その意味で、医療改革の橋頭堡になるのではないかという期待を持っている。
福原義春委員(資生堂名誉会長)
大久保先生の話を伺って、日本歯科医師会が歯と口の問題についていかに深くお考えかを認識して大変感心している。私は母譲りで子どものときから歯が悪い。いろいろな経緯があったが、70代になって最後に、とてもいい歯医者さんに巡り会った。その歯医者さんになってから、歯が痛いから行くのではなく、定期的に半年に1回くらいのペースで行くという心がまえになった。
去年、77歳のときに初めて8020運動を知った。どうしてこれをもうちょっと若いときにだれかが教えてくれなかったのか。歯が痛くなったり、歯茎が痛んだりする度に歯医者さんへ行っていたわけだから、その方々が教えて下さればもうちょっと気をつけることもあっただろうと思い、残念だ。
20代、30代のときからゴールを聞かされていれば、あるいはもっと良い生活の仕方があったのかもしれない。
いまの歯医者さんになってから、「歯を磨かないで歯茎を磨きなさい」。歯茎を指でマッサージすることはもちろん、歯ブラシも歯茎にあてるつもりで使いなさいと教わった。前の歯医者さんは、「縦に磨きなさい」。簡単に言えばお医者さんごとに違うことを教えられた。習慣はなかなか治らない。学校のころにでも教えていただいていたらよかったのではないか。
広報は、素人にわかりやすい広報をしていただきたい。このような場での議論と同時に、それをいかに発信していくかをお考えになることが大事ではないかと思う。
もう一つ、患者としての心配は、歯科医療はインプラントなどいろいろな新技術が出ているが、私がかかっているお医者さんは、現代の最新医療をどのくらい吸収して取り入れているか、あるいは「あなたはこちらへ行ったほうがいい」と(専門医を)紹介してくれる体制がどのくらいあるのか。それが気がかりだ。
そういうことも含めて、患者が相談しやすい体制をつくってくだされば、歯医者さんへの信頼は高まってくると思う。
(以下、ディスカッション及び内部委員・オブザーバーの発言は、会議録を参照してください。)





